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月夜の兎庭園
トミーウォーカーのPBW「シルバーレイン」で遊ぶ一七夜月氷辻・烏兎沼華呼の雑記です。 各内容は、カテゴリーで判断してください。
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 数日たって、
 「銀誓館学園」というところから郵便物が届いた。

 彼が言った組織だろうかと思ったが、ヴァンパイアだけでなく色々な能力者がいるらしい。彼が封印されている間に、何か事情が変わったのかもしれない。そこで、彼の言うところの、ゴーストを殲滅したり能力を伸ばしたりしているようだ。
 両親にはどんな説明がなされたのかはわからない。しかし、親の機微で娘の変化はなんとなく感じていたようだ。
 なにか、自分たちとは違うものになってしまった娘。それにどう対応してよいかわからずにいる、両親。その戸惑いも不安も伝わってきた。
 でも氷辻はそこから逃げずに両親に言った。
「がんばって入った学校なのに、ごめんなさい。でも、わたし、銀誓館学園に行きたい。そこで、自分に出来ることをしたい。それで」
 氷辻はひと呼吸つくと、続けた。
「わたし、そこで友達をつくりたい」

 ある平日。
 氷辻は野間のクラスをたずねた。
「わたし、転校することになったの」
 氷辻は野間に告げた。
「引っ越すの?」
「ううん、そうじゃないけれど…学校は変わることにしたの。でね、その」
 少し迷ってから。それでも決めていたことなので、まっすぐに野間を見て言う。
「田川さんの連絡先、教えて欲しいの」
 言ってからあわてたように付け足す。
「その、でも、すぐに手紙書けるかどうかわからないから、まだ田川さんには内緒にしておいてねっ」
「喜ぶよ」
「え」
 野間は笑って言った。
「李亜、きっとすごく喜ぶ」
「……だったら、わたしも、嬉しい、かな」
 そう言って、氷辻も遠慮がちにぎこちなく微笑んだ。 

 ここで過ごす日々ももう少ない。
 教室で。いつものように氷辻は空を見上げた。そこには、相変わらずの青空が広がっている。
 でも、
 と氷辻は思う。
 毎日青い空も、毎日同じように見えても、変化している。
 昨日と同じものはない。
 同じように見えても、同じ青ではない。
 自分も、そうなっていられるだろうか。
 今日の自分は、昨日の自分と違っているか。
 あの夜から。自分は変わってこれただろうか。
 あの夜に荊でついた傷はほんの数日でいつの間にか癒えていた。
 そう、どんなに傷ついても、いつか癒える。
 たとえば、深い傷がついて跡が残ってしまっても。いつか、それは自分の一部となっているだろう。
 まだ、それは少し怖いけれど。
 でも、
 今度自分を好きになってくれる人がいたら、わたしはその人の力になりたい。
 わたしも誰かを好きになって、手を差し出したい。
 わたしは自分の弱さを知っている。
 でも、それからもう目を逸らさずに立ち向かっていくと、あの夜決めた。
 たとえ傷ついても、
 それはきっと癒えると、今は信じている。
 彼にはもう会えないだろう。
 多分、もう会えない。
 でももしかして。いつか、遠い未来に会えたとしたら。
 彼の役に立つくらいの力を手に入れていたい。
 そして、彼の前に立つ時は、恥ずかしくない自分でいたい。
 そこへ向かって、歩いていけるだろうか。
 ううん。
 歩いて、いきたい。

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HN:
一七夜月氷辻・烏兎沼華呼
性別:
非公開
自己紹介:
 ここで使われているイラストは、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。 イラストの使用権は作品を発注したお客様に、著作権はイラストを描かれた絵師に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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