兄への手紙

華呼


拝啓、兄さん。
メールがまだ得意でないので、お手紙にしました。

お元気ですか。
と、こないだ風邪を召されたと聞いたところでした。
大丈夫ですか？
最近、急に冷え込んで来たし、昔ほどでないにせよ、まだ体もお強くないんですから。無理しないでくださいね。

近くにいるのに、あまり家に帰れなくてすみません。
その、学校や結社活動が楽しくて…ついお家に帰るのを先延ばしにしてしまっています。
わたしにとっては、これは喜ばしいことなのですが、
お母様からこのまえ、電話で時々帰ってくるようにと言われてしまいました。

そう、また帰ったらお話ししますが、
学校はとても楽しいです。
この前のテストは…いまひとつでしたが（これがお母様に怒られる原因ですね…お勉強も頑張ります）。
最近は運動会もあって、わたしも頑張って参加しました。
わたしのいたクラス、というかチームは優勝できませんでしたが、
色んな競技に参加して、皆さんと一緒に一つのことをするというのが、
こんなに楽しいものかと。
初めて知った気がします。

でも、
少し前に、悲しいことも、ありました。
わたし達には、出来ることというのは本当に一握りなのだなと。
思い知らされました。
でも、それしか出来ないと思っても。
それは出来るからと。出来ることは、頑張りたいです。
それが人のためになるとか、おこがましい気もしますが。
やらないよりはましなんだと…。

今でもそのことを思い出すと、胸が潰れそうなほどつらく、悲しくなります。
でも絶対にそれは忘れない。
そこからたくさんのことを知ったと思います。
わたしは気持ちも力も、全然弱いけど。
少しずつでいいから、強く、なりたいです。

ああ、なんだか変なことをたくさん書いてしまいましたね。
今度の休みには一度戻ります。
が、すぐに寮に戻るつもりでいますので、よろしくお願いします。

あのですね、最近お母様や親戚の方が、
いわゆる「いいお話し」を持って来ているのはご存知ですか？
あれ、兄さんの方から牽制することは不可能ですか？
本当に、すごい困るんですけど。
（笑っている兄さんの顔が思い浮かびますがっ！　全然笑い事じゃないですよ！）
わたしはまだ全然そういうつもりがないのでっ。
まだまだ、たくさんのことをお勉強中の身ですしっ。

兄さん、お家を継ぐか継がないか、まだ決めなくていいって言いましたよね。
ずっと、家を継ぐつもりで頑張って来ましたが、
最近、迷いがでています。
わたしの持つ力は、もっと、普通の人たちの為に使うべきではないかしら。
そういう迷いを…お母様は気づいているのかもしれません。

とにかく。
また帰ったら、少し兄さんの考えも聞かせてくださいね。

それでは、また。
体、大事にしてくださいね。
風邪を甘く見て、無理しちゃだめですよ。

烏兎沼華呼